2009年10月25日

31.やわらかさ


この雪のような子を授けて下さいと頼んだのだと、彼女は言う。
彼女の愛する雪面は今、際どい儚さをもって横たわっている。

[文章修業家さんに40の短文描写お題/31.やわらかさ]

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2009年05月02日

30.イベント


ユタカは時計を見て溜息をついた。それから時計を見る。
「そわそわしても仕方ないよ?」
「分かってるよ」
そう言って、彼はまた時計を見た。

[文章修業家さんに40の短文描写お題/30.イベント]

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2009年02月23日

29.感謝


 眼は鋭く光っている。右手には私が渡したハンカチ。それを握りしめて、鋭い眼光をほんの少しだけ和らげる。
 それが彼の感謝の表し方だった。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/29.感謝]


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2009年01月14日

28.体

小鳥は美しく鳴いた。そして羽ばたく。
彼女は美しく歌った。そして駆けて行く。
彼女とあの小鳥に違うのは、きっと体のつくりだけだ。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/28.体]

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2008年12月18日

27. 芝居

右手が上がる。小指が折れ、薬指、中指が続く。すっと人差指の先から腕、肩を伸ばした彼女の射抜く眼差しを、左手の扇子が静かに隠した。


[文章修行家さんに40の短文描写お題/27.芝居]


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2008年10月09日

26. 死


 頬は硬く、そして冷たい。この白い塊には目には見えないわずかな欠損がある。彼の穴と言う穴から抜け出て行ったもの。
 魂とは熱なのだ。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/26.死]



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2008年09月20日

25. 生


父の釣り上げた魚は、堤防の上でびちびちと激しくとび跳ねた。母がまな板の上でさばく時、彼は血を流すだろう。今日の夕餉は焼き魚だ。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/25.生]


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2008年08月17日

24. 悲しみ


雨は、赤茶けた大地をたちまち黒色に変える。目をこらさなければ気付かないほど、幽かに、かすかに降る雨でさえも。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/24.悲しみ]

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2008年08月16日

23. 彼と彼女


白いパンプス。
そこから伸びた足も白い。
その先はタイトスカートの中に隠れている。
スカートの腰には、日に焼けた男の手が巻きついている。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/23.彼と彼女]


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2008年08月06日

22. 噂



空き缶は悲鳴を上げて、わずかに凹んだ。友人の顔は青い。その場の空気が冷たくなったからか。慌てて声をかける。
おい、単なる噂だからな。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/22.噂]


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2008年04月04日

21. 神秘


「逃げないでください!」
彼女は叫んだ。けれども、その心配はなかった。何故なら僕は、彼女の美しさにすっかり虜になっていたのだ。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/21.神秘]

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2008年03月01日

20. 怒り


どくどくと自らの心臓が脈打つ音が、やけに大きく感じた。握りしめた拳が、意思とは関係なく震える。ああ、自分は今生きているのだ。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/20.怒り]



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2008年01月23日

19. 化粧


人込みをかき分けて見た花嫁行列。白無垢が目に眩しい。
姐さんの口を彩る紅の赤がぐにゃりと歪む。隣の達吉が呆れたように溜息をついた。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/19.化粧]



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2007年12月15日

18. 仕事


夕子はすやすやと眠っている。ほんのり色づいた頬、握りしめられた小さな手。窓の外では、蜩が寂しく鳴いている。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/17.初体験]


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2007年12月13日

17. 初体験

辺りは随分と薄暗いのに、空は灰色に光っていた。涙で滲んだその空は、今でも胸の内で輝いている。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/17.初体験]


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2007年11月25日

16.遊び


何やら子供らの声が聞こえなくなったと、そっと東屋の戸をあけて見れば、色づいた山の向こうに饅頭のようなお天道様が沈むのを見ていた。

[文章修行家さんに40の短文描写お題/16.遊び]



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2007年11月23日

15. 信仰

札束だった。ぼくの父が、最期まで握りしめていたのは。
先日死んだ母の手にはロザリオがあった。
きっとぼくは何も持たないだろう。


[文章修行家さんに40の短文描写お題/15.信仰]


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2007年09月06日

14. 手紙

 
滑らかな肌をした白い封筒にぼたりと赤い蝋を垂らすと、隣で大人しく見ていた愛犬のクウが悲しそうに一声鳴いた。


[文章修行家さんに40の短文描写お題/14.手紙]


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2007年08月08日

13. 女と女

この手紙を上の淵で姉に渡してほしいと言ったのは、白い着物を着て、髪の長い女だった。彼女の姉も美人なのか。その下心が失敗だった。


[文章修行家さんに40の短文描写お題/13.女と女]


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2007年07月23日

12.夢

銀盤の端は靄の中へと消えていた。
あ、夢を見ているなと思った途端、靄がすごい勢いで押し寄せてきて、僕はあっというまに飲み込まれた。


[文章修行家さんに40の短文描写お題/12.夢]


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